経営人材管理の日米の違い



米国の経営人材の採用や報酬制度を設計する際、さらには、日常のコミュニケーションをする際には、特に以下の日米の違いを、常に頭に置いておいて行動することが必要です。これらの違いを理解しておかないと、現地経営陣と日本本社両側において、不安や不満の原因となり、お互いの不信感につながることがしばしばです。 

経営人材への報酬制度

米国では、「中長期的な企業価値の向上に必要な、優秀な経営人材を確保できるだけの報酬をオファーしているか」「企業価値の向上に向けたインセンティブが十分に働く仕組みが整備されているか」を重視します。一方、日本では、役員への登用は内部昇格が中心ですので、むしろ社員との内部公平性の観点から、「過度な報酬を支払っていない」ことに意識が向いています。

転職市場

米国では、一つのポジションには2年から5年しか留まらず、キャリアアップのため頻繁に転職するのが一般的です。また、転職市場も非常に活発です。

経営責任

日本の経営者は、一般的に、社内のコンセンサスとそれに到るプロセスを重視し、責任の所在が明確になるトップダウンでの決定を避け、市場調査や競合製品との比較をベースにした、「データに基づいた意思決定プロセス」を好みます。一方、米国企業は、市場調査はしますが、あくまで経営者の決定のための材料にすぎず、経営者が責任(とそれに見合う報酬)をとって「決断」します。完璧なデータなどありえませんから、経営者は、不十分なデータの中で、素早く意思決定をし、かつ、従業員を含む関係者全員を巻き込む「説得力」を持たなければなりません。優れた決断力・説得力・実行力を持った経営者が評価されます。

距離

米国では、日本と比較して、実際に会ってコミュニケーションする機会が非常に少なくなります。例えば、東海岸と西海岸は飛行機で6時間、時差が3時間あり、また、同じ建物にいても、マネジャー以上は個室を持つ場合が多く、電話やITによる効率的・効果的なコミュニケーションの実施、意識的なコミュニケーション機会の設定、明確なメッセージ、頻繁なフィードバックが必要となります。